どうしてそこまで言い切れる。

就職活動生という立場上、ややフォーマルな感じで目上の方とお話する機会が多々あるが、そうなるとやはり大切だなぁ。気をつけなければならんなぁ。と深く反省させられるのが、話し方である。


堂々とはきはきと話して「俺はエクセレントでオーサムな男だぞ。」というメタ・メッセージを送信できさえすれば、結構しょうもないことでも割と立派に聞こえる。日本語とはそういう言語である。ならばネイティヴジャーパニーズスピーカーとして生を受けた以上そういうストラァテジーも積極的にエンプロイしていかんければならん、と思い最近意識してぱきぱきしゃべろうと努力している。いや、ほんとに。スィリアスリー。


ハウエーヴァー、非常に由々しき事態なのであるが、一方で度々フェイスブックでどうでもいい事をやたらと長くグダグダ書いているためか、最近日常でもスパッ。と、スマート。に言い切ることができなくなってしまい、性格のほうまで影響されてこれ優柔不断で何となく言い訳がましい、ウジ男になってしまったのである。


ソシュールさんという昔ヨーロッパのどこかに住んでいたリングウィストも「私たちがどんなことばを使うかが、私たちをいろいろと規定するっぽい」的なことを言ってたらしいし、メイビープラァバブリーポッスィビリーそういうことなんだろう。


と、ここまでちょっと横文字を多用しイノベーター感、変革者感を出すことで自分自身を誤魔化してきたが、いや、これは実際ほんまにヤバい。正直言って俺、普通に、焦ってる。どうヤバいかと申し上げると、例えば先日ある企業様で集団面接があり「自己紹介がてらに趣味でも、教えてください。」的なことを言われた。他の2人は正々堂々、シュビッ。と、スパパァン。と「テニスです!」とか「読書です!」とか言ってたが私はというとウジ男なのでズパッ。っと言い切ることができず、


「そ、そうですね、料理、ですかね、いや、でもしかし実際のところは別にレシピや食材を吟味したりとかそういうことはせずまぁ、日々のご飯を拵える、と申しますか、どっちかというと家事のようなもので、となりますとこれは誰でもすることですしこれを趣味と呼ぶのははばかられる、もしかすると、これを趣味と呼ぶことを不快に思われる方がいる可能性を否定できない気がしないでもないこともないこともないかもしれない場合も考慮した方が良さそうな気さえしてきて、そうなるとやはりまずは、趣味、という言葉の定義から始めたら良いのではないかと私なんかは愚考しておりま、」


と、そこまで言って面接官が怪訝な顔をしているのに気付き、ごめんなさい。と謝罪、脂汗、以降その面接官は私に質問をしてくれなかった。もちろん落ちた。


これはあかんわ、ヤバいわ。今日からは正々堂々、即断即決、精悍で歯切れの良い男にならん。と決意し、善は急げ、今日の夜ごはんはアジフライ丼にしようと即決した。おほほ。よかったぁ。よかったぁ。これで次の面接はバッチリだぜ。と笑いながらスーパーへ行ったが自分で揚げるか出来合いを買うかで1時間悩み、そうしているうちに鮮魚がなくなったため出来合いを買うことにしたが、それ以降も2つ買うか買わないか、揚げ直すか否か、胡椒が切れてるため買い直すか否かで散散悩み、今は出来上がったアツアツの丼を前にして醤油かウスターソースか決められず、うんうん唸ってる。